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博物館の化石が展示されるまで

STEP1 目的地の選定

wakayama_01.jpg和歌山の岩石分布図

化石を探すには堆積岩(砂や泥、生物の遺骸などが固まってできた岩石)からなる地層が分布している場所に行かなければなりません。火成岩や変成岩の中からは化石は見つかりません。また、地層もその年代や堆積環境などがさまざまなので、目的とする化石が見つかる可能性が高いエリアを地質図や地形図とにらめっこしながら絞っていきます。ただ、よっぽどの大物を狙うわけでなければ、実際のところは既に化石産地として知られている場所や、論文で図示されている場所を訪れることが多いです。

STEP2 化石の採取

次にSTEP1で選定したエリアを歩いて岩盤がむき出しになっている場所、すなわち露頭を探します。露頭は川沿いや谷筋、海岸などに多く見られますが、工事現場も要チェックポイントです。露頭が見つかれば表面をよく観察し、有望そうであれば石を割って化石を探します。化石が見つかれば慎重に取り出します。この際、化石の周りの石がある程度くっついた状態にした方が壊れにくいです。ただ、どんなに慎重にやっても壊れてしまうことはあるので、その場合は接着剤で補修するか、または破片を全て回収して持ち帰るかします。採取した化石は新聞紙やティッシュなどで包んで持ち帰ります。

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化石探し中

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化石の発見

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取り出した化石

STEP3 化石のクリーニング

cleaning.jpgクリーニングの様子たいていの場合、野外で発見されたばかりの化石というのはその一部あるいは半分以上が余分な石で覆われていて、全体像がよくわからないというのがふつうです。ですから、博物館で化石を展示するためには、化石の表面に付いている余分な石を取り除く作業、すなわちクリーニング作業が必要になります。

化石のクリーニングは室内で行います。基本的には小さなハンマーとタガネを使って余分な石を取り除いていくのですが、化石を壊さないようにあわてず慎重に作業を進めていきます。
現場であるいはクリーニング中に壊れた化石は接着剤でくっつけます。化石がもろい場合は、樹脂をしみ込ませて補強しなければならないこともあります。

ふつうはハンマーで叩く震動で、化石とその周りの石が少しずつ分離していくものですが、ときにはその分離がしにくい化石もあります。そういう場合はエアーチゼルなど特殊な道具が必要になります。有田川町で発見されたモササウルスの化石などはこのパターンでした(モササウルス発掘プロジェクト 化石のクリーニング参照)。

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化石のクリーニングに要する時間は、そのサイズや分離の良し悪しによってさまざまです。写真のアンモナイトの化石は数時間で完了できましたが、骨の化石のように分離の悪いものだと数週間かかることもあります。大型脊椎動物の骨格が保存された化石ともなると、完了までには数年を要します。

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STEP4 化石の保管・展示

R0011178.jpg収蔵庫に保管されている化石

クリーニングが完了した化石は、論文と照合するなどしてなるべく名前を調べ(同定作業)、標本番号を付けて産地情報等を登録します。登録の終了した化石は収蔵庫にて保管されます。

現在、当館では数千点の化石標本を収蔵しています。この中には保存状態の良い素晴らしい化石や産出の稀な珍しい化石もありますが、大半は地味でごくありふれた化石です。展示だけが目的であれば、見た目が立派なものや珍しいものだけ集めれば良いのかもしれません。
しかし、ありふれた化石であってもそれが見つかったという事実を記録することは重要ですし、そうやって標本を後世に残すことは博物館の使命でもあります。また、そういう化石が思わぬ形で研究資料になることもあります。

収蔵標本数に比べると、展示標本数はほんのわずかです。私たちは膨大な数の収蔵標本の中から、多くの人に見ていただきたい化石標本を選び出して展示をしています。

step4.jpg展示の様子