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和歌山に恐竜がいたころ

平成19年、湯浅町内から和歌山県初の恐竜化石が発見されました。それは肉食恐竜のものだったと考えられるたった1本の歯の化石なのですが、当時の和歌山にも恐竜がいたことを証明する重要な発見でした。化石は湯浅層と呼ばれる白亜紀前期(約1億3000万年前)に形成された地層に含まれていました。平成30年には同じ場所から新たにスピノサウルス類の歯の化石が見つかっています。

白亜紀前期という時代は、さまざまな生きものにおいて原始的なグループから現代型グループへの移行期間になっている例が数多く見られるなど、生物の進化史上から見ても重要な時代です。陸上には恐竜が大繁栄していましたが、大陸の分裂と移動によって多様化が進行していました。森林には主としてシダ植物と裸子植物(ソテツ類やイチョウ類など)が繁茂していました。

白亜紀前期の日本は現在のような列島ではなく、アジア大陸の東のはしにありました。しかも、紀伊半島及び四国や九州の南部は存在すらしていませんでした(これらの大地の土台が形成されるのは白亜紀後期以降)。和歌山県で言えば、湯浅町や広川町のある有田郡のあたりがちょうど大陸と海との境界でした。

この時代に形成された地層は日本各地に分布していて、なかには恐竜の化石が多数産出している地域もあります。和歌山では湯浅町や広川町など有田郡の西側地域に分布しているのですが、恐竜の化石が発見されたのは湯浅層と呼ばれる地層です。

湯浅層からは保存の良い植物化石やシジミ類など汽水環境(海水と淡水が入り混じる場所)を好む貝類の化石が産出するので、湯浅層は陸地~汽水域で形成された地層と推定されています。湯浅層の1つ上に重なっているのが有田層ですが、これは海底で形成された地層で、海の生きものの化石がたくさん見つかります。その主なものはアンモナイトや二枚貝、巻貝、ウニなどですが、この時代としては貴重なエビやカニの化石も発見されています。

湯浅の恐竜.jpg
湯浅の恐竜(原画:谷本正浩)

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約1億3000万年前の海底