紀州の鯊(ハゼ)Gobies in Kishu
33 ドロメ (泥目・泥魚)
スズキ目ハゼ科アゴハゼ属
ドロメChaenogobius gulosusは、体長10-15㎝程のアゴハゼ属のハゼです。ドロメは、本州の沿岸で普通に見ることのできるハゼの1種で、日本海側では北海道西部から九州、太平洋側では青森県東部から九州、国外では朝鮮半島、黄海、渤海の沿岸岩礁域や汽水域に分布します。同じ属のアゴハゼC. annularis(紀州の鯊24「館だよりVol.25 No.2」)に外見が似ていますが、胸鰭と尾鰭に黒色点列がないこと、尾鰭に白い縁取りがあることで区別できます。また、他のハゼ類に比べて胸鰭の上方に遊離軟条があること、第一背鰭後方と尾柄部に黒斑があることが特徴です。
潮間帯の潮溜まりや浅い藻場などで見ることができるドロメは、磯などで行われる観察会の格好のターゲットです。子供たちでも容易に採集できるので、当館主催の観察会では毎年本種にお目にかかれます。しかし、春から初夏にかけてはドロメやアゴハゼの繁殖時期にあたり、だいたい私の所へ持ち込まれるのは幼魚。ドロメとアゴハゼは成魚でも混同されやすいのに、幼魚では・・・と思われるでしょうが、意外にも幼魚の方がわかりやすい場合もあります。
ドロメの幼魚は、尾鰭付け根(尾柄部)に大きな丸い黒斑があり、それで区別できます。この黒斑の周囲には黄色素胞が発達していることが多く、黄色地に黒い丸がくっきり見えます。アゴハゼでは、この黒斑が薄いか、いびつな格好をしている場合が多くあります。もっとも、これも全長10mm以上の幼魚の見分け方で、時々持ってきていただく、それより小さなガラス細工のような幼魚はこちらも頭を捻らざるおえません。
(自然博物館だよりVol.27 No.4, 2009年)
*2012年和歌山県版レッドデータブックで情報不足に選定されています。