紀州の鯊(ハゼ)Gobies in Kishu
43 シロズキンハゼ (白頭巾鯊)
スズキ目ハゼ科シロズキンハゼ属
シロズキンハゼHetereleotris poecila (Fowler, 1946)は、和歌山県や長崎県(ながさきけん)の男女群島(だんじょぐんとう)から南西諸島(なんせいしょとう)、小笠原諸島(おがさわらしょとう)に分布する体長4㎝程度のハゼ科魚類です。低潮帯の転石(てんせき)まわりでみられます。
シロズキンハゼは、名前のとおり眼(め)の後方から第1背鰭(せびれ)前方あたりまで大きな白い斑紋(はんもん)があり、これが「頭巾(ずきん)」のように見えます。また、胸鰭上方(むなびれじょうほう)に遊離軟条(ゆうりなんじょう)があること、腹鰭(はらびれ)は吸盤状(きゅうばんじょう)ではないこと、尾鰭基底(おびれきてい)に茶褐色(ちゃかっしょく)の横帯(おうたい)があること等が特徴(とくちょう)です。
元々、南西諸島や小笠原諸島など暖(あたた)かい地域の海にすむハゼとして知られていましたが、数年前に串本町(くしもとちょう)の海岸で見つかり、その後、和歌山県内でも越冬(えっとう)している可能性が高いことがわかりました。転石の陰(かげ)から泳ぎ出てくることも少なく、「白い頭巾」以外は全体が茶褐色の地味なハゼですので、これまでは研究者やダイバーに見落とされている地域もあるかもしれません。また、体色の変化具合によってクモハゼ属(ぞく)やアゴハゼ属の魚類と見間違えそうになります。特に「白頭巾」に注目し過ぎるとヤハズハゼBathygobius cyclopterus(館だよりVol.28 No.4「紀州の鯊37」)と間違えそうです。そういう時は「腹鰭が吸盤状か、そうでないか」を確認すれば比較的(ひかくてき)簡単に見分けられます。
和歌山県内でシロズキンハゼが見つかったことを「地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の影響(えいきょう)」などと考えると心配になりますが、上述したように地味なハゼですから、昔から誰にも見つからずに和歌山にいた可能性もあります。周辺の地域の状況把握(はあく)と今後のシロズキンハゼの分布がどのようになるのか、気になります。
(自然博物館だよりVol.30 No2,2012年)