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ワカヤマソウリュウ

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紀州の鯊(ハゼ)Gobies in Kishu

60 シラスウオ類 (白子魚類)

スズキ目シラスウオ科

60 シラスウオ類 (白子魚類)

シラスウオ類Schindleria sp.は、ハゼ亜目シラスウオ科に属するハゼの仲間です。日本では沖縄島以南の熱帯、亜熱帯域の海に生息する魚類とされていましたが、2012年に和歌山県東牟婁郡串本町から採集、確認することができたため、和歌山県以南の太平洋沿岸に現れると考えられます。世界では主に紅海、インド洋、太平洋で確認されており、串本での記録は紅海に次いで高緯度からの記録になります。また、シラスウオ類と呼ばれるように分類が定まっておらず、いくつかの種が含まれていると考えられています。

シラスウオ類は体長25mm程度で細長く、腹鰭はなく体に目立った色素もありません。ただ尾鰭につながる最後の脊椎骨が長く、その脊椎骨とその前の脊椎骨の接合部分が膨らむこと、一般にオスの生殖突起が大きいこと等が特徴です。また、シラスウオ類は孵化後約3-4ヶ月程度で成魚になり繁殖に加わって一生を終えると考えられ、もっとも短命で、小さい脊椎動物の仲間と言えます。短時間の一生を過ごすためなのか、鱗もなく、仔魚に近い形態のまま成魚になります。このような現象を幼形成熟(ネオテニー)と言い、シロウオLeucopsarion petersii Hilgendorf, 1880(紀州の鯊1「館だよりVol.18 No.2」)やキュウリウオ目シラウオ科のシラウオSalangichthys(Salangichthys) microdon (Bleeker, 1860)も同じです。このように外部の特徴があまりないのですが、オスの生殖突起の形状からいくつかの種がいることが予想されてきました。さらに遺伝学的研究により、シラスウオ類はさらに細かく分かれそうであることが明らかになっています。会うことも難しいのですが、見分けることはもっと難しそうです。

シラスウオ類は、海での生活は不明です。ダイバーなどによって記録されたことも、ほぼ無いようですし、そもそも昼間はサンゴ礁の下の方や礫底の中に潜んでいるそうです。夜間になると活動するようですが、詳細はわかりません。ただ、外洋に近い穏やかな漁港などで集魚灯を灯して待っていると現れることがあるようです。沖縄では大量に現れることもあるようですが、和歌山では片手で足りる程の個体数しか取ったことがありません。紀伊半島に現れるシラスウオ類は、偶然黒潮にのって流されてきたシラスウオ類かもしれませんが、卵巣が大きなメスも確認できています。彼らのライフサイクルを考えると、紀伊半島沿岸で産卵している可能性が十分にあります。何種類かいるであろうシラスウオ類のうち、海流に乗りながら分散を繰り返していくような種がいても面白いかもしれません。

(自然博物館だよりVol.34 No.3,2016年)


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